それでも君に恋をしてる。
「みんなが、誰ひとり漏れることなく、可愛く綺麗にモニターにおっきく映ってほしい」
私が好きになったアイドルは、自分の卒業コンサートでこんなことを語る人でした。
自分のことは後回し、持ちうるぜんぶのやさしさを他人に注ぎ込むことができる人。
いつどんな時だって、見ているのは自分より他人。相手の感情への触れ方が、とっても上手な人。気を遣わせず、ただそこにいて、でも確かに心の奥にそっと寄り添うことのできる人。心の動きに敏感な人。痛みに気づくことができる人。誰かを愛する強さを持っている人。
飛鳥ちゃんに出会って約6年。私はあなたに、たくさんの”愛とやさしさのかたち”を教えてもらいました。
飛鳥ちゃんの”言葉”が大好きだった。紡ぐ文章が好きだった。
だから私も、あなたがくれたこの感情をどこかに残しておきたいと思って、今この場所を開いているのだけれど、書きたいことも、伝えたいことも、それはもう抱えきれないほどあって。それほどまでにあなたが魅力的なひとであったことを、この文字を綴りながら感じています。
2022年11月4日。
卒業を知ったあの日、涙が止まらなかったのは、どうしようもなく飛鳥ちゃんのことが大好きだったから。
憧れで、光で、希望だったから。
そんなあなたの決めた旅立ちを、好きだからこそ素直に応援したかったし、好きだからこそできなかった。
いつかは、と思いながら目を逸らし続けていた二文字を前にしたその日から、より"齋藤飛鳥”という人について考えるようになりました。
あなたはずっと、ひとりが好きなひとでしたね。
少しの強がりもあったとは思うけど、他人と深くかかわることを望まなかった。いつも部屋のすみっこにいて、まるで乃木坂46が歌う曲の主人公そのものみたいだった。
強すぎる光をひとりで放つあなたは、ふうっと息をかけると消えてしまいそうに儚くて、そんなあなたから私は目が離せなかった。
お姉さんたちに囲まれて、にこにこと柔らかく笑う姿をよく見るようになったのは、いつからだったかな。表に出さない、出そうとしないあなたの愛をちゃんと汲み取ってくれていた一期生のお姉さんたち。
そんなあたたかい日向みたいな場所だから、あなたは自分の居場所として選び続けたのかなと、今ではそんなことを考えます。
仲間の、後輩の旅立ちを、何度も何度も見送ってきましたね。時には笑顔で、時には涙を流しながら。
”見送る側にもパワーが必要” 誰より実感してきた11年間。
だからあなたは言いましたね。今いる子たちには自分を送り出すためにそんなパワーを使わせたくない、と。
飛鳥ちゃんが教えてくれた、ひとつではないやさしさの形。
自分がしてきた苦労を、誰かにはさせないために。後輩を、強い雨や風から守るために。見えないところで自分を犠牲にする。
そんな努力を決して口には出さないけれど、あなたが誰よりあたたかい心の持ち主だってことくらい、ずっと見ていればわかります。
真夏の全国ツアー2022の期間中から、たくさんの後輩のブログに出るようになった飛鳥ちゃんとのツーショット。
きっと、心の中で何か変化があったことを感じていました。
もちろん、色々な後輩の隣で笑う飛鳥ちゃんが見られるようになったのはとってもとってもうれしかったけれど。
「飛鳥さん!」
徐々に増えていく、この声が、呼び方が。愛おしくて、さみしかった。
「あす!」と笑う、真夏さんの声に言い表せない安心感を覚え始めたのもこの頃だった気がします。
1・2期生がどんどんと新たな道へ進む中で、飛鳥ちゃんがこの場所に居続けるのは、真夏さんがいるからだってずっと勝手に思っていました。もちろんそれも理由のひとつではあったと思うけれど、卒コンを終えた今ならはっきりわかります。
今は何より後輩たちを守りたくて、そばにいたくて、愛を注ぎたくて、大切だと抱きしめたくて、あなたはこの場所にいることを選び続けていたんだと。
卒業を発表した次の日に行なわれた生配信。卒業を決めてから初めて流したという涙の理由は、メンバーでしたね。
涙がこぼれそうになると後ろを向いて隠したがるその姿が相変わらずで、思わず画面越しに笑みが溢れたけれど。いつもなら話すことをやめてしまうタイミングでも、前を向いて胸の内を伝えてくれたこと、あぁ成長したんだなって思いました。飛鳥ちゃんより年下だけど、ね。
伝えることをやめなくなった。涙に感情を閉じ込めなくなった。伝わらないことを恐れなかった。
その時感じた変化に、乃木坂46のメンバーとして今ここに立つ自分の大切さや意味を飛鳥ちゃん自身が感じてくれていたような気がして、うれしかった。
一期生の末っ子から始まり、次世代エースと呼ばれ、ついには一期生最後のひとりになり、変わりゆく乃木坂の中で変わらずいてくれた飛鳥ちゃん。正確には、変わらないようにいてくれたのだと思うけれど。
移ろう季節とグループの在り方の中で、ずっと変わらず大好きな人の姿がある、それだけで私が応援し続ける理由になった。
いつしかグループの看板を背負うようになり、そのちいさくて華奢な背中には一体どれだけのものがのしかかっていたのだろうと、考えるだけで胸が苦しくなるけれど。
それでも、その場所にかかる重圧を見せずに前に立ち続けてくれた人。
乃木坂をつくり、つなぎ、まもってくれた人。
飛鳥ちゃんが卒業するときに、「今日までここにいてよかった」と思えるグループであるといい、私の願いはそれだけでした。
乃木坂46の飛鳥ちゃんを応援してきた6年間は本当に楽しいことばかりだったし、毎日にきらきらした景色が増えて、飛鳥ちゃんが出会わせてくれた”乃木坂46”に、私は随分長い間人生を救われてきました。
自分に自信のなかった私が、乃木坂46を好きでいる時間だけはとびきり可愛くいられる気がして、ライブや握手会に行くのが楽しかった。名前を呼んでもらったあの瞬間のことは、恋にも似た感情で、今でも思い出すだけでドキドキする。
あなたがくれた愛も煌めきも、教えてくれたやさしさの意味も、誰かを愛せるその強さも、眩しいほどに輝いていたあなたを追いかけてきた日々たちも、彩ってくれた日常も、出会えた大好きな音楽も言葉も、ひとつ残らず忘れたくなくて、ひとつ残らず抱えて明日からも生きていきたいから。
あなたに出会えたこの人生を大切に生きるために、私は今日もあなたの光に照らされています。
不器用だけど、ちゃんと言葉をくれる人。
グループを卒業した今、しあわせと、穏やかに流れる時間があなたの日常に少しでも増えているといい。
ずーっとずーっと、どこかで笑っていてね。
乃木坂46の飛鳥ちゃん、卒業おめでとう。